「ありのままの自分を受け入れよう」と聞くと、少し違和感を覚える人もいるでしょう。
苦手な部分をそのままにしていいのか。
努力しなくなってしまわないのか。
失敗しても「これが自分だから」で済ませるのは甘えではないか。
このように感じるのも不思議ではありません。
しかし、自己受容は「何も変えなくていい」と開き直る考え方ではありません。
現在の自分に苦手な部分があると認識したうえで、それだけを理由に自分全体を否定しない姿勢です。
「今はできない」と認めることと、「永遠にできなくていい」と決めることは違います。
自分を責め続けるより、現在地を正確に見た方が、次に変える部分も見つけやすくなります。
自己受容は現状維持を正当化する考え方ではない
自己受容という言葉を、「今のままで全部OKと考える方法」だと思っている人もいます。
しかし、改善したい部分があれば変えて構いません。
仕事で確認ミスが多い。
人前で話すのが苦手。
生活リズムが乱れている。
感情的になって相手へ強く言ってしまう。
こうした部分を認識し、「次は変えたい」と考えるのは自己受容と矛盾しません。
違いは、その問題を「だから自分は駄目な人間だ」という結論へ広げるかどうかです。
「できない自分を認める」と「諦める」は違う
たとえば、人前で話すのが苦手だとします。
自己否定では、
「こんなこともできない自分は駄目だ」
と考えます。
諦めでは、
「自分には無理だから、もう何もしない」
と考えます。
自己受容では、
「今は人前で話すのが苦手だ」
と現在の状態を認めます。
そのうえで、必要なら準備時間を増やしたり、少人数の場から練習したりできます。
現実を認めるからこそ、具体的な対応を考えられます。
失敗を認めても自分全体まで否定する必要はない
自己受容が難しくなる場面の一つが失敗した時です。
仕事でミスをした。
試験に落ちた。
人間関係で失言した。
この時、失敗そのものを認めるのは必要です。
問題は、そこから「自分は何をやっても駄目だ」と話を広げる状態です。
仕事のミスなら、何を確認し忘れたのかを見る。
試験なら、足りなかった勉強範囲を確認する。
失言なら、どの言葉が相手を傷つけたのか振り返る。
行動の問題として扱えば改善できます。
人格全体の問題へ広げる必要はありません。
自己否定は反省しているようで改善につながらない場合がある
失敗した後に自分を強く責めると、「十分に反省している」と感じるかもしれません。
しかし、
「自分は駄目だ」
「どうせまた失敗する」
「自分には能力がない」
と考えるだけでは、次に何を変えるのかが見えてきません。
反省するなら、原因を具体化する必要があります。
確認時間が足りなかった。
質問せずに自己判断した。
睡眠不足だった。
予定を詰め込みすぎた。
ここまで具体化すると、次の行動へつなげられます。
自分へ厳しくすれば成長できるとは限らない
「自分に甘くしたら成長できない」と考え、自分へ厳しい言葉を使う人もいます。
もちろん、改善が必要な場面では自分の行動を振り返る必要があります。
しかし、厳しい言葉と具体的な改善は別です。
「本当に使えない」
と自分を責めても、次の方法はわかりません。
一方、
「今回は準備不足だった。次回は前日に確認する」
なら、修正する内容が明確です。
厳しく責める量ではなく、具体的に考える量を増やしてみて下さい。
短所を長所へ無理に言い換えなくてもいい
自己受容について調べると、短所を長所へ言い換える方法を見かける場合があります。
優柔不断は慎重。
心配性は準備が丁寧。
頑固は意志が強い。
もちろん、そのような見方が役立つ時もあります。
しかし、自分が本当に困っている部分まで無理に長所へ変換する必要はありません。
「決断に時間がかかりすぎて困っている」なら、その状態をそのまま認めれば十分です。
美化するのではなく、現実として扱うところから改善を考えられます。
自己受容と自己肯定感は同じではない
自分を受け入れられない時、「自己肯定感を高めなければ」と考える人もいます。
しかし、自分を高く評価できない日にも、自分を受け入れることはできます。
「今日は自信がない」
「今回はうまくできなかった」
「自分でも嫌いな部分がある」
こう感じながらも、それを自分の価値全体へ広げない。
自己受容について、自己肯定感や自己効力感との違い、自分を認められない原因、日常へ取り入れる方法まで詳しく知りたい方は、自己受容とは何かを自己肯定感との違いから詳しく解説した記事を参考にして下さい。
「自分を好きにならなければならない」という考えから少し離れて、自分への見方を考える材料になります。
自己受容は努力をやめる理由にはならない
現在の自分を受け入れたからといって、目標を持てなくなるわけではありません。
もっと仕事を覚えたい。
体力をつけたい。
人との話し方を変えたい。
収入を増やしたい。
こうした希望を持って構いません。
大切なのは、「達成できなければ価値がない」という条件を付けない姿勢です。
目標へ向かう自分だけを認めるのではなく、途中で失敗した自分も同じ自分として扱って下さい。
目標を「自分の価値を証明する手段」にしない
目標を持つ時、「これを達成すれば自分にも価値がある」と考えてしまう場合があります。
昇進したら認められる。
年収が上がったら自信を持てる。
恋人ができたら自分を好きになれる。
SNSで評価されたら安心できる。
この状態では、目標へ届かないたびに自分の価値まで揺れます。
目標は生活を良くするために使い、自分の存在価値を証明する試験にしない方が気持ちは安定しやすくなります。
「変わりたい」と「今の自分が嫌い」を分ける
自分を変えたい気持ちは、必ずしも自己否定ではありません。
今より良くなりたい。
苦手な部分を減らしたい。
生活を整えたい。
このような希望は自然です。
ただし、変化の原動力が、
「今の自分には価値がない」
だけになっていないか確認して下さい。
「今の自分にも苦手な部分がある。だから少し変えてみたい」
という考え方もできます。
現在を否定しなくても、未来を変えることは可能です。
完璧になるまで自分を認めないルールを見直す
自己受容を難しくする考え方の一つに、「条件付きで自分を認める」があります。
痩せたら自信を持つ。
資格を取ったら認める。
仕事ができるようになったら認める。
恋人ができたら認める。
この条件は、達成すると次の条件へ変わる場合があります。
資格を取ったら、次はもっと難しい資格。
収入が増えたら、さらに高い収入。
終わりがなくなれば、いつまで経っても現在の自分を認められません。
目標は目標として持ちながら、今の自分の評価とは切り離して考えてみて下さい。
他人からの評価を参考情報として扱う
仕事や人間関係では、他人から評価される場面があります。
上司から褒められる。
注意される。
SNSで反応をもらう。
恋人から好かれる。
こうした評価は、自分の行動を振り返る材料にはなります。
しかし、他人の評価がそのまま自分自身の価値になるわけではありません。
仕事の評価が低かったなら、その仕事で求められている内容を確認します。
「評価が低かったから人間として価値がない」と広げないようにして下さい。
SNSで比較した日は条件の違いを確認する
SNSには、結果を出した人や楽しそうに過ごしている人が次々に表示されます。
自分が疲れている時に見ると、
「みんなは前へ進んでいる」
「自分だけ何もできていない」
と感じる場合があります。
しかし、画面に表示されているのは相手が選んだ一場面です。
自分については、失敗も不安も疲れも全部知っています。
比較条件がそろっていないと気づくだけでも、受け止め方は変わります。
できなかった日は能力以外の条件も見る
計画していた内容ができなかった時、すぐ「自分は意志が弱い」と考えないようにしてみて下さい。
睡眠時間は足りていたか。
予定を詰め込みすぎていなかったか。
体調はどうだったか。
必要な情報はそろっていたか。
作業量そのものが現実的だったか。
人の行動は能力だけで決まるわけではありません。
条件を見ると、自分を責めるだけでは見えなかった改善点が見つかります。
他人へ許せる失敗を自分だけ許していないか見る
友人が仕事でミスをした時、どのような言葉をかけるでしょうか。
「次から気をつければいい」
「忙しかったから仕方ない部分もある」
「誰でも失敗するよ」
このように言えるのに、自分が同じ失敗をすると、
「最低だ」
「自分には能力がない」
と強く責めているかもしれません。
自分だけに別の採点基準を使っていないか確認してみて下さい。
「今日は受け入れられない」と認める日があってもいい
自己受容を意識し始めると、今度は「ちゃんと自己受容できているか」を採点したくなる場合があります。
また自分を責めた。
また人と比較した。
まだ昔の失敗を引きずっている。
そこで「自己受容すらできない自分は駄目だ」と考えれば、新しい自己否定になります。
今日は自分を受け入れにくい。
今はかなり落ち込んでいる。
そう認識するだけの日があっても構いません。
自己受容を完璧に実践する必要はありません。
変化は「自分を嫌うため」ではなく生活を良くするために行う
自分を変えたい時は、何のために変わりたいのかを考えてみて下さい。
人に認められるためだけなのか。
今の自分を消したいからなのか。
それとも、自分の生活を少し楽にしたいのか。
たとえば片付けを習慣にしたいなら、「だらしない自分を直すため」だけではなく、「探し物を減らして生活しやすくするため」と考えられます。
変化を自己罰にせず、自分の生活を整えるための選択として扱ってみて下さい。
まとめ|自己受容は変わらない理由ではなく変わるための現在地
自己受容は、何をしても自分を正当化する考え方ではありません。
失敗したなら失敗を認める。
苦手なら苦手だと認める。
改善が必要なら改善する。
その一方で、一つの失敗や短所を理由に、自分全体へ「価値がない」という評価を付けない姿勢です。
「今はできない」と「ずっとできなくていい」は違います。
「変えたい」と「今の自分は駄目だ」も同じではありません。
現在地を否定せず確認できれば、何を変えれば生活が良くなるのかを具体的に考えられます。
自己受容はゴールではなく、自分を必要以上に責めずに次の行動を選ぶための土台として考えてみて下さい。